※第15回~は読書会の議事録を公開用に再編集したものを掲載します
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選書の理由
- これまで遊廓について2回学んできたので、視点や記述スタイルのバランスを取りたかった
- 廃娼運動側の歴史
感想
- 公娼制をめぐる政治や運動が立体的に分かる
- 廃娼運動だけでなく、法整備や政治における論争が丹念に論じられていた。廃娼運動ひとつとってみても、政治・運動ふたつの側面がある。そのことが立体的に分かるようになっている。視点を変えながら
- 廃娼運動は国の体面や衛生の話から始まった。人権という観点ではない。
- マリア・ルス号事件など、公娼制が国家の体面の問題から論じられてきたことも印象的だった。日本における人身売買の歴史についてあまり詳しくなかったので。
- 人身売買、という言葉が印象的だった。例えばアメリカ史だとよく見るし馴染みある言葉だけど、日本史だとなんとなく馴染みなく感じられてしまう。その感覚こそに問題がある。本当は日本でも行われていたことなのに。そのことに気がつけた視点だった。
- 廃娼運動をめぐる議論が整理されている
- その他
- 大逆事件で社会主義者としてレッテルを貼られて処分されてしまった。そこに廃娼運動反対派たちの力が働いていたのはなるほどと思った。
- 米国では参政権が社会主義弾圧の前に成立していた。もっと後だったら、もっと遅れていたかもしれない。
- バーナード・ショーの戯曲『ウォーレン夫人の職業』は知らなかったので興味が湧いた。
- 無産政党組織準備委員会が成立した際、山川菊栄が女性の直面する問題を綱領に入れようとしたら「女権主義だ」「反マルクス主義だ」と言われてしまったのが印象的だった。「女性の問題は後回し」にされてしまう場面、どこの時代・国・コミュニティでもよくある。
- 公設の性売買から上がる収益が、 1882年の神奈川県予算の20%以上に当たるほどの金額だった、という部分に驚いた。日本の近代化に使われてきたお金の出処。
- キリスト教が「未開の地で啓蒙する」ことを「啓蒙された側」としてどう受け止めればいいのか、と考えたことがあったので、「娘で借金を返す、女が売られ、男達が買うことが当たり前のことになっており、キリスト教などの新たな世界観を持ってでもしなければ、その是非を俎上に乗せることすら困難であったのではないだろうか」という言葉にはなるほどと思った。「日本は外圧でしか変われない」ということでもあるけれど。
- 伊藤博文の事件は知らなかった。有名な人でもこういう事件があったとは。
- 難しかった・読みにくかった点
- 「知らなかった名前が多かった」というのが最初の感想。
- 文章の意味が取りにくい部分もあった。
- 結局「新しい男」が何なのかが分かりにくかった。全体の論旨とあまり繋がっていなかったのでは。(夏目漱石の部分は面白かった)
- 「思われる」という書き方が多かったのが気になった。
- できればもっと言及してほしかった点
- せっかくここまで書けているので、戦後についても論じられてほしかった。「近代日本」だから1945年までになってしまうのだけど、せっかくなので。売春防止法まで言及していれば、より完成度が高かったのでは。
オリジナルサブタイトル
※読書会のまとめとして、自分なりのサブタイトルを各自で考えて発表しています。
- 「戦前の日本における『男らしさ』とは?」(berner)
- 「廃娼運動と女性活動家たち」(アズシク)
概要
- 開催日:2022年5月
- 選書担当:アズシク
- 議事録作成:アズシク
- 標題作成:アントニン