※第15回~は読書会の議事録を公開用に再編集したものを掲載します
※トップページからご覧になっている場合、「続きを読む」をクリックしてご覧ください
選書の理由
- 以前、この読書会で『社会運動の戸惑い』を読んだ。その続編ということで選んだ。
感想
- 慈恵病院の件。赤ちゃんを預かってくれるのは良いことだけど、理由は「中絶させたくないから」というのがなるほどねと思った。最近『射精責任』という本が話題になったが、この本の著者はモルモン教徒のフェミニスト。これも「できれば産まなきゃ」という内容だったのを思い出した。
- 大学の図書館に、2006年頃のフェミニズム・ジェンダー・女性学関連の文献がたくさんある。この時期の危機感から発行が増えたのかなと思った。女性学系の学会により知の蓄えが出てきた頃。
- 「日本初のセクハラ裁判」という見出しのテレビ番組を見たことがある。その裁判についても言及されていた。こういう歴史的流れの中で生まれた動きだったのだなと思った。
- 「守る」という言葉について。大学の授業で、「守るということは同時に排他的になるという要素も含まれている」と学んだ。ちょうど自分が教わっている先生の研究の軸にもなっている内容だったので印象に残った。
- 七生養護学校(当時。現在は特別支援学校)での性教育。話は聞いたことがあった。勝訴して良かった。
- 勝訴はしたけれど、世間のイメージは「やばいもの」というレッテルが貼られたままの状態。悲しい。
- 図書館の蔵書に口出しするのは検閲。最近、大学の授業でロバート・ダーントン『検閲官のお仕事』を読んでいる。関わりや繋がりが分かるようになりたい。
- 選択的夫婦別姓について。女性研究者も、苗字が変わると業績を追いにくくなる。だから別姓が可能になってほしい。
- 最近「家ついていっていいですか」に出た女性。結婚したい人がいたけど自分の苗字が変わるのが嫌で結婚しなかった。どちらの姓でもいいとは言っても基本的には男性側の名前になる。
- 研究者だと、著者の名前で芋づる式に調べていくためには名前の繋がりが必要。そういう必要性を理解できる学問ということで、自分は人文を選んでよかった。そういう探し方は非効率で時間がかかるとして、最近では嫌われる風潮だけど大事なこと。
- 自分も名前が変わった身。名前が変わると気持ち悪いなと思う。結婚していたときの名前よりも、生まれながらの名前のほうがしっくりくる。アイデンティティの一つ。相手の名前になるのが嬉しいという人もいるけど、そうじゃない人もいると知ってほしい。
- 「千と千尋の神隠し」でも、「名前を奪うこと=相手を支配すること」とされている。他の文化ではどうかわからないけど日本には「名前」に対してそういう考えがある。平安時代でも、身内以外に自分の名を教えないなど。右派は名前の大切さを分かっているから支配するのでは。女の名前を奪うことで支配する。
- 女性にとって苗字が大事になったのも、女性が外に出て働くようになったからというのもあるかも。
- なぜ批判が出づらいのか。この本を読むと、危険性が分かっているのであれば批判や対抗運動が出てもいいはずなのにどうしてだろうと感じる。批判をするには、ストライキや労働争議など力関係で下になる人同士の連帯が大事なのだけど、最近はそれがないがしろにされすぎている。
- 初めて知った団体や組織があった。自分の世代だと知らない人がほとんどなのでは。次の選挙のときにはこういうところも見ていきたい。今は自民公明所属じゃないけど過去に所属していたとか。
- 選挙時、候補者が無所属を名乗りながら党の支援を受けている問題について。国と違って地方議会は「共通課題を一緒に解決する」という目的から、政党を出さずあえて無所属で出馬することがある。「中立」という体。
- 前に読んだ『社会運動の戸惑い』と内容が重なる部分があった。後半の安倍政権のところ、大手のニュースを見ているだけではわからないことが水面下で行われていた。気持ち悪い内容。水面下のことも細かくクリティカルに見ていかないととんでもないことになる。危機感を抱いた。「少子化対策」として官製婚活が民間とコラボしていたけれど、こういうものが今後進んでいくような気がする。女性の負担を考えていない。ただ結婚して子どもを産めばいいという考え。これから促進されるかもしれなくて怖い。
- 自民党は現在、資金のことで揺れているけれど、日本保守党もネットのなかで支持が拡大している。日本の保守化を細かく見ていく必要があると改めて思った。
- 政治だけでなく民間についても。アパホテルの話が出てきた。ジェンダーの話とは逸れるが、最近は海浜幕張でイオンが木下サーカス(動物をサーカスで使っている)に場所を提供していて、店舗では宣伝をしている。世界的にサーカスでの動物使用は廃止されていく中、東南アジアで展開する大手企業はそれで良いのだろうか。買い物はある種の投票行為なので、自分がどこにお金を落とすのかよく考えたい。
- 民間のほうも注意して見ていかないといけない。どこに自分のお金を落とさないといけないのか。イスラエル寄りの企業である伊藤忠(ファミマ)とか、サントリーとかも。できる範囲でやっていくしかないけど。
- 良い本だったので、さらに深めるのであれば、「政策的な影響」と一言でまとめてしまっているような部分を「こういう議員連盟もある」などより具体的に示した方がよかったのではと思った。
- 本書96頁に「かながわ女性の活躍応援団」の広告が掲載されていたが、「女性の活躍」を謳っているのに、男性しかいないというこの違和感に既視感があると思った。何だろうと考えていたら、今年9月に第二次岸田第2次改造内閣の発足に伴い、副大臣と政務官の人事の女性起用が0人だったというニュースだった。(注1)「女性主体で」と口で言っているだけでは、その効果は実感できず、中身が伴っていないという印象が強く、「女性活躍」の実現にはほど遠いと思った。
- 本書120頁に官製婚活(恋愛支援)の事例として「壁ドン」を教育に組み込むとあったが、あまりにも馬鹿馬鹿しすぎて共感性羞恥を覚えた。個人が言っているならまだしも、政府(内閣府)で真面目に資料を出すっていうことが本当に驚きだった。しかも、消されず、未だに内閣府のHPに残ってることがすごい。この「壁ドン教育」を監修した人を調べてみたら高学歴なのに幼稚すぎる内容で閉口してしまい、鳥肌が立った。
- これは勝手なイメージだが、保守的な政治団体、統一教会からでた出版物やマスメディアの名前が「世界日報」、「ワシントン・タイムズ」といったワールドワイドな単語を使うので、どこが運営しているかを知らないと、(名前のイメージから)信頼できるようなイメージに陥るようなところがある。きちんと中身を確認しないといけないと改めて思った。
- また、政治や宗教団体のみならず、企業が持っている思想や、事業内容などを確認し、情報を取捨選択していかないといけないとも思った。
注1)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230915/k10014196891000.html
オリジナルサブタイトル
読書会のまとめとして、自分なりのサブタイトルを各自で考えて発表しています。
- 「点と点をつなげて見えるもの」(アズシク)
- それぞれのニュースは知っていても、こうして繋げて論じることで初めて見えるものがある。
- 「時系列で見ていく 政治・宗教右派とフェミニズムの流れ」(ノビツムリ)
- 直近50年の、今の日本社会を形作った直接的な政治の動きが書かれていた。どういう時系列のもとで何があったのか。過去の政治の影響を受けている今を生きている。時系列で見ていくと、何が良いのか悪いのかの指標の一つになる。
- 「草の根保守運動50年の現在地」(アントニン)
- 「メディアリテラシーの大切さ~情報が氾濫する今だからこそ必要不可欠な力」 (Kimiko)
- 「まずは、私たちの背後を知ることから。」(berner)
- 「バックラッシュの裏側史~しっかりソースつき!~」(薪)
- 裏というほど裏じゃない、公然と…だったのではとも思ったけど、でも裏だった。図版などをたくさん入れてくれてるのが説得力抜群だった。ソースをちゃんと出さないと、こういうのは陰謀論的に見えちゃうというのがある。右派でも左派でも。根拠を載せていることで説得力ある資料になった。
概要
- 開催日:2023年12月
- 選書担当:アズシク
- 議事録作成担当:アズシク
- 標題作成:薪
姉妹サイト
- フェミニズム読史会 HP
- 過去に読書会で読んだ本の書影一覧はこちら
- 金カム読史会 HP ←アイヌ史を学ぶ読書会です
- 金カム読史会 ブログ ←金カム読史会の読書会の記録です
- 過去に読書会で読んだ本の書影一覧はこちら
-
@AZUSACHKA 's note ←管理人個人のブログです