※第15回~は読書会の議事録を公開用に再編集したものを掲載します
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選書の理由
- 自分自身がアメリカのフェミニズムについてどういうトピックが一番いいかな、と考えた際に思いついたのがBLMだった
- BLMは黒人で、女性である という二重に差別されてしまっている人たちが起こした運動
- 日本ではそもそも社会運動があまり盛んではない。安保法制が記憶に新しいけど、それ以降まとまった形での運動はない。社会運動の基盤がない
- でも他の国を見ればこういうムーブメントがある。ここから色々と日本の社会運動に足りないものなどを学べる(アメリカの運動の抱えた問題点も含めて)
感想
- BLM運動に関わった団体や名前が掲載されていることで、彼女ら・彼らの思いを知ることができて良かった。
- この本に出てくるのは「名もなき人々」。でもそれぞれに成長物語があり、人生がある。
- 人名を通じて知らない文化圏に出会えた
- 英語だけど馴染みない名前多い
- ここ最近、米国社会において名前の付け方はルーツに即した形でつけることが多い
- 西欧風の名前をつけるのが社会的な慣習ではあったけど、あえて自分の出身地やルーツを意識した名前をつけることがここ数十年のトレンド
- BLMは自然発生した運動ではなく、アクティビストが作り上げたもの
- BLMは自分が想像していたよりもずっと戦略的だった
- 日本のメディアだとBLMの戦略的な点が描写されていないけど、この本ではそれは違うというのがよくわかった
- 単に路上に出て声を上げる運動ではない(そういうイメージは偏見)。
かなり組織的な、しかも平和的な、若者たちのムーブメントだった。 - 運動やデモだけじゃなく、読書会や勉強会もやっている組織の話もたくさん出てきたのが印象的だった
- 米国のマイノリティに対する日本の報道機関の解像度の低さ
- 著者のバーバラ・ランズビーは研究者だけど直接運動にも関わっている。それがすごい
- 黒人運動におけるセクシズムなどへの批判
- 60年代の運動;女性が下に見られていた
- 過去にあったジレンマ;”指摘すると水をさしてしまう…”
- でも今の運動は批判もできている。運動は進化してる
- ランズビー自身も黒人でありながら、黒人の公民権運動の歴史を批判している。その点が”歴史家”だなと思った
- BLMの”Lives” について
- 日本の報道だと「命」というニュアンスで報じられていた。
- でも、この本だと「生活」を併記していたのが印象的だった
- 白人警官による暴力と、それへの反発 という報道になりがち
- でも、それだと加害者個人の罪のみに帰結してしまいがち
- 黒人が置かれている制度的人種差別が、アメリカ社会に根ざしているのがよく分かる
- 大きな発見として、従来の米国の社会構造を根本的に変える変革運動がBLM と捉えることができた
- BLMというフレーズは、たった3つの簡単な単語で構成されているにも関わらず、日本語に訳すとしたら奥が深い…
- (翻訳家)柴田元幸氏がBLMをどう訳すか?をtwitterで当時問題にしていた
- 黒人の命「は」大切だ「も」「こそ」など様々な表現があり、奥深い
- 様々な訳が出来るということは、BLM自体が単に差別に反する運動なだけでなく、社会全体の問題を提していると言える
- 警察暴力の話だけではない
- BLMを考えるうえで「インターセクショナリティ」の視点は大切なキーワードであり、インターセクショナリティが捉える「社会的地位」や「性別」「国籍」「障害の有無」などの視点も含めて観察しなきゃいけない、ダイナミックで大きな運動
- 2018年の本なので、ジョージ・フロイド事件やコロナについては触れていないので、今の状況も調べたら面白そうと思った
- インターセクショナリティ 今ホットなテーマ
- 経済格差など、全ての問題を包含して”Lives”と使ったほうがいい。全部まとめられる言葉なのがすごい。(それだけ根深いということでもある)
- BLMと交通の関わり
- 印象的な話:加害者個人(白人警官)の責任問題のみに帰結するのは間違っている
- 殺された黒人の母が「加害者である白人警官を監獄に入れるのは簡単だが、
罰するだけでは社会は良くならないので、教育制度を整えていくなど、
社会がより良くなるような仕組みを整えてほしい」 - 「個人の問題」ではなく「社会全体の問題」として考えている
- 2020年 Defund the police(警察に対する資金凍結)を実施すると治安悪くならない?という反論が聞こえてきそうだけど、そもそも警察にけっこうな予算がかけられていて、警察が抑圧になっている。
- 公共政策のほうにお金をかけるべきではないのか?身近に使われている製品が受刑者の労働によって作られているが、刑務所ではなく福祉に充てるべきだ、という議論
- 殺された黒人の母が「加害者である白人警官を監獄に入れるのは簡単だが、
- 警察暴力について
- マイノリティとマジョリティとで見えている景色が全然違うのだなと思った。それはきっと日本でも。
読書会中に紹介された本やサイト
- 黒人を描いたNHKのアニメ動画はなぜ差別的で、「許されない」表現なのか | ハフポスト NEWS
- 世界を動かす変革の力——ブラック・ライブズ・マター共同代表からのメッセージ
- ポリス・イン・アメリカ -Voice of BLM-
- 刑務所システム革命 -アメリカで囚人になるという事-
- 緊急リレートーク:ブラック・ライブズ・マター運動の背景と課題 (録画) 2020年6月21日(日)
- subversive records
オリジナルサブタイトル
※読書会のまとめとして、自分なりのサブタイトルを各自で考えて発表しています。
- 『制度的人種主義に抗するローカルな努力の積み重ねの軌跡』(アントニン)
- 『BLM―3語がつむぐ大きなヴィジョン』(Kimiko)
- 『誰もがsomebodyとされる運動』(berner)
- 『ローカルな団体からハッシュタグへ』(アズシク)