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第30回 フェミニズム批評を通して源氏物語を読むと…? - 『フェミニスト紫式部の生活と意見—現代用語で読み解く「源氏物語」』読書会

第15回~第29回は読書会の議事録を公開用に再編集して掲載していましたが、
第30回~は、読書会で出た意見・感想を短くまとめてご紹介します。

選書の理由

以前から個人的に気になっていた本。今年の大河ドラマ「光る君へ」の主人公が紫式部なので、読むならこのタイミングだろうと思って選びました。本の内容は『源氏物語』のフェミニズム批評なのですが、文学史も歴史だ!ということで選びました。(選書担当:アズシク)

感想

フェミニズム批評を通すと源氏物語の解像度が上がる

すでにストーリーは知っているはずの物語でも、フェミニズム批評を通すとこんなにも見え方が変わるんだ!ということに驚かされた本でした。例えば、夕顔の君は「内気な女」「無邪気な女」と光源氏から認識されているけれど、隠れ住んでいる身でありながら自分から光る君に思わせぶりな歌を送り付ける女が本当に「内気な女」「無邪気な女」なのか?というくだり。他にも末摘花や源典侍六条御息所など、この本を通じてイメージが変わったキャラクターがたくさんいる!という話になりました。

昔のことを今の価値観で裁いてはいけない、とよく言われます。例えば『源氏物語』には強姦のシーンがたくさん出てきます。そんな体験をしてしまったキャラクターに同情したり、暴力を働いたキャラクターに怒ったりすると、それを「今の価値観で裁いてはいけない」という声がどこかから聞こえてくるような気がします。たしかに時代背景を考えると強姦は「よくあったこと」ではあるのですが(いわゆる夜這いですね)、だからといって被害感情や怒り、悲しみがなかったということにはなりません。『源氏物語』にはそうした感情も書き込まれています。そういうことを悲しいと思う気持ちは、けして「今の価値観」ではなく「当時の価値観」でもあるのだ、ということを再確認できました。

また、ミソジニールッキズム、マンスプレイニング、オイディプスコンプレックス、ジラールの欲望の三角形など、フェミニズム用語や心理学の用語で説明されているのが新鮮で面白い!という話にもなりました。

フォントも含めて読みやすい

他に話題にあがったのは、この本の読みやすさでした。文章の中身はもちろんですが、こういった内容の本には珍しく、明朝体ではなくUDデジタル教科書で作られています。かな文学である源氏物語にも雰囲気が合っている!という感想も出てきました。

(文責:アズシク)

サブタイトル

※読書会のまとめとして、自分なりのサブタイトルを各自で考えて発表しています。

  • ホモソ社会に生きた光源氏(アズシク)
    • 現代用語をたくさん使っているのが面白かったので、何か一つ代表的な用語を選んで使いたかった。
  • 『新解釈 源氏物語』—令和時代に生きる私たちに紫式部が語りかけるメッセージとは(Kimiko)
    • 筆者(紫式部)がどういうフェミニズムの視点でこの物語を書いたのか、という視点が新鮮だった。なので「新解釈」という言葉を選んだ。
  • 「画期的で刺激的な解釈!~千年前のさまざまな女たちの生き様と、それを認め、救い、映し出す鏡としての光源氏の物語~」(はりねずみ)
    • 紫式部が描きたかったのは、モテイケメンの光源氏ではなく女性たちのほうだったのかも。光源氏は、女性たちの姿を映す鏡だったのかもしれない。
  • 「現代のジェンダー規範を源氏物語から考えてみる」(アントニン)
  • 「『女性たちのあはれ』への現代的共感」(midori)
    • 共感できる部分がたくさんあったので。「あはれ」もじめじめしたかわいそうなイメージではなく、今でもこういうのあるよね~という共感の気持ちを込めた。
  • 「当時の語り手の問題意識を、豊富な前提知識に現代の知見を交えて読みとる」(薪)
    • 紫式部にはこういう問題意識があったのだという主張を読み取った。現代の知識も豊富に織り交ぜている。
  • 源氏物語から見る「女性像」と「男性像」」(W)
    • 作者の現実への問題意識とリンクが印象に残った。女性像と男性像という言葉が合ってるかなと思い、「」を使った。

概要

開催日:2024年3月
選書:アズシク
感想担当:アズシク
標題作成:アズシク

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